アスベストの健康被害こそ十分な補償が必要アスベストによる健康被害を受けた場合は原則として労災保険から給付を受けられます。

しかし、家族がかつて行っていた業務によってアスベストの健康被害を受けた場合、それが原因で亡くなっても、労災保険の請求が時効を迎えていると給付を受けることができませんでした。

それを補うための制度としてアスベストに関する特別遺族給付金が設けられています。制度の内容と給付される金額について把握しておきましょう。

労災保険から給付されない場合に政府が給付する制度アスベストの健康被害に関連する特別遺族給付金とは、アスベスト関連の業務にたずさわっていた労働者の遺族に対して、労災保険に代わって政府が給付を行う制度のことです。

通常、業務が原因で労働者に健康被害が発生した場合は、労災保険によって補償される形となります。しかし、労災保険の遺族補償給付を受けられる権利は5年で時効となるため、その権利が時効になってしまった後は請求を行うことができませんでした。

アスベストが原因で一家の主が亡くなると、遺族としては生活面も含めてとてもつらい状況に置かれることとなりますが、労働者の遺族の心情に寄り添う形で設けられた制度が特別遺族給付金です。

なお、労災保険は原則として労働者が加入する保険であり、社長や役員は労働者ではないことから労災保険に加入することはできませんが、労災保険の特別加入の制度を利用すれば、社長や役員も労災保険に加入できます。

それにより、労災保険の特別加入者も特別遺族給付金の受給対象者となります。

アスベストの特別遺族給付金種類と受給金額は?アスベストの特別遺族給付金には「特別遺族年金」と「特別遺族一時金」の2種類があります。

特別遺族年金とは、遺族の生活保障を目的として給付されるもので、給付額は原則として年額240万円です。

特別遺族一時金とは、家族を亡くした遺族の心情に寄り添うことを目的として給付されるもので、給付額は1200万円です。

特別遺族給付金の請求は各都道府県の労働局、または労働基準監督署で行います。

特別遺族給付金が支給される対象と請求できる期限は?特別遺族給付金の支給対象は、以下の条件となります。
・労災保険の遺族補償給付を受けられる権利が5年の時効によって消滅したこと
・労働者が亡くなったのが2016年(平成28年)3月26日までであり、その労働者の遺族であること

特別遺族給付金の請求期限は2022年(令和4年)3月27日までとなっています。

石綿健康被害救済法は2006年(平成18年)3月27日に施行されましたが、施行当時における支給対象者は、同法施行の前日である2006年3月26日までに亡くなった労働者の遺族でした。

また、請求期限は同法が施行されてから6年が経過した時点である2012年(平成24年)3月27日までとなっていました。

2011年(平成23年)には、アスベストによる健康被害を受けた人に対する補償を手厚いものとするため、同法が改正されました。それによって、特別遺族給付金の請求期限が10年延長される形となったのです。

なお、労働者が亡くなったのが2016年3月27日以降である場合、特別遺族給付金の請求を行うことはできませんが、労災保険の遺族補償給付を請求できる期間は5年間であることから、その期間を過ぎなければ労災保険から遺族補償給付を受けられます。

労災補償給付が時効を迎えると、労災保険からは補償を受けられない形となりますが、アスベストの健康被害に関しては、政府が補償しています。

労働基準監督署に相談し、条件を満たすようであれば請求を行いましょう。

(画像は写真ACより)

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