アスベストとは繊維状に変形した鉱物の総称「アスベスト」とは繊維状に変形した鉱物を指しますが、一口にアスベストといってもさまざまな種類があります。
また、アスベストはその危険性が問題視されていますが、危険性はアスベストの種類によっても変わります。
アスベストによる健康被害を防ぐためにも、どのような種類のものがあって、どんな危険性があるのか、ということについて理解しておきましょう。
アスベストは「蛇紋石族」と「角閃石族」に分けられるアスベストとは、繊維状に変形した鉱物の総称で、大きく分けると「蛇紋石族(じゃもんせきぞく)」、「角閃石族(かくせんせきぞく)」となります。
蛇紋石族のアスベストには「クリソタイル」があり、白石綿と呼ばれることがあります。
また、角閃石族のアスベストにはさまざまな種類のものがありますが、代表的なものは「クロシドライト」と「アモサイト」です。クロシドライトは「青石綿」と呼ばれることがあるほか、「アモサイト」は「茶石綿」と呼ばれることがあります。
そのほか、角閃石族のアスベストには「アンソフィライト」「トレモライト」「アクチノライト」があります。
アスベストの種類は蛇紋石属と角閃石族の2種類に分類できることを説明しましたが、この2種類のうち特に危険性が高いのは角閃石族のアスベストです。
アスベストの製造や使用は段階的に禁止されてきましたが、角閃石族に分類されるクロシドライトとアモサイトは危険性が高いこともあり1995年(平成7年)に製造等が禁止されました。
角閃石族のアスベストの製造や使用が禁止された後、蛇紋石属のアスベストであるクリソタイルは引き続き製造等が認められていましたが、クリソタイルも人体にとって危険性があることから、2004年(平成16年)から製造等が禁止となっています。
次の項目では、角閃石族の方が危険性が高い理由についてみていくことにします。
蛇紋石族、角閃石族にはどんな性質がある?蛇紋石族よりも角閃石族の方が危険性が高いということについては、それぞれのアスベストの性質を知ることでより理解が深まります。
アスベストの性質については、環境省のホームページに掲載されている「廃棄物・リサイクル対策 報告書」の「平成17年度アスベスト含有廃棄物の処理技術調査報告書」の第2章「アスベストの特性(以下、同レポート)」を参考にします。
アスベストの耐熱性についてみてみると、クリソタイルが安定している温度は約500度であり、角閃石族のアスベストはクリソタイルよりも高い温度でも安定しています。
また、耐酸性および耐アルカリ性、つまり耐薬品性が最も高いアスベストは角閃石族のアンソフィライトであり、最も低いのは蛇紋石族のクリソタイルです。このことから、蛇紋石族よりも角閃石族のアスベストほど耐薬品性が高いことが分かります。
耐熱性、耐薬品性の両方からみても角閃石族の方が優れていることになりますが、見方を変えれば角閃石族のアスベストは変質しにくいことになります。
つまり、肺の中に入り込んだ後も変質しにくいと考えられることから、人体にとっては有害性が高いといえるでしょう。
そのほか、角閃石族の危険性が高いことについては、その形状も関係しています。
クリソタイルはしなやかな性質を持つのに対し、角閃石族は針状、または棒状となっています。つまり、角閃石族のアスベストが肺の中に入り込むと、肺の組織に残りやすくなることからも、人体に対しては有害性が高いといえるのです。
なお、同レポートには「有害性」についても触れていますが、胸膜中皮種の発がん性の有害性については、クリソタイルを1とすると、アモサイトが100、クロシドライトが500との見解が示されています。
参考:環境省
平成17年度アスベスト含有廃棄物の処理技術調査報告書
第2章 アスベストの特性
https://www.env.go.jp/recycle/report/h18-01/chpt2.pdf
アスベストは角閃石族の方が危険性が高いといえますが、危険性を有しているのは蛇紋石族のものも同じです。
現在ではアスベストの粉じんが飛散するケースは非常に少ないですが、古い建物が解体されている場合など、アスベストが飛散する可能性がある場所では念のため気をつけましょう。
(画像は写真ACより)