補助金額は各自治体で異なるほか、補助がない自治体も

アスベストを含む建物を解体する場合、アスベストの飛散防止対策を行う必要があり、解体費用が高額化する傾向があります。

それに対応するため、補助金制度を設けている自治体がありますが、補助金制度を設けていない自治体があるのも現状です。また、補助金制度を導入している自治体が設定している補助金額を調べてみると、各自治体で異なっています。

アスベスト関連の補助金に関する現状について詳しくみていくことにしましょう。

アスベスト処理費用の目安は?

1970年代から1990年代にかけて建築された建物にはアスベストが使用されているものが多く、建物の解体時にはアスベストの飛散防止対策を行わなければなりません。

そのため、通常の解体費用よりも高額となります。

国土交通省は2008年4月に「石綿(アスベスト)除去に関する費用について」を公表し、吹き付けアスベストの除去費用を掲載しています。除去費用の目安は以下の通りです。

アスベスト処理面積
300m2以下:2.0万円/m2~8.5万円/m2
300m2~1000m2:1.5万円/m2~4.5万円/m2
1000m2以上:1.0万円/m2~3.0万円/m2

引用:国土交通省ホームページ

仮に、アスベスト処理面積が100m2である場合、アスベストの処理費用として少なくとも200万円が上乗せされ、作業コストが高い場合には850万円が上乗せされる可能性があることになります。

このことから、アスベストを含む建物の解体を検討している立場としては、アスベスト処理のための補助金制度を利用したいところですが、補助金制度を導入しているのは一部の自治体に限られます。

アスベスト調査・除去に関する補助金の実情

一例として、新潟県のアスベスト補助制度を参考にします。

2020年1月19日付の新潟日報によると、新潟県内でアスベスト調査の補助とアスベスト除去等の補助の両方を設けている自治体は、新潟市や柏崎市、新発田市など県内30市町村のうち6つの市のみです。

それ以外の市町村ではアスベスト処理のための補助金が利用できない状態となっています。

また、アスベスト補助金の金額は、各自治体によって異なります。

以下に、政令指定都市で行っているアスベスト補助金の金額を記載します。

アスベスト補助金の金額

※別紙、Googleドキュメントの表を掲載する

アスベスト調査の補助金は多少の違いがあるものの、多くの自治体で上限が25万円となっています。一方、アスベスト除去等工事費用の補助金は各自治体で異なります。

補助の対象となるのは工事費の3分の2以内であることが多いですが、自治体によっては2分の1以内、あるいは3分の1以内に制限している場合があります。

また、補助金額も各自治体によって異なり、東京都新宿区や神奈川県相模原市のように上限が100万円を下回るケースがあるほか、岡山市のように上限を1000万円とする自治体もみられます。

自治体の補助金が充実していれば、アスベストを含む建物の解体がスムーズに進められるメリットがあります。

しかし、補助金が少ない、あるいは補助金制度がない自治体においてはアスベストを含む建物の解体がなかなか進まない状況にもなりかねません。

島根県 アスベスト関連の調査業務の一括化を計画中

そのほか、アスベスト関連の調査を行う場合、補助金を利用する際のネックとして手続きに手間がかかることがあげられます。

手続きで行う内容としては、見積もりの依頼や建築図面の準備、アスベストが使用されている現場の写真撮影などがありますが、手続きで行う内容と用意すべき書類の種類が多さは補助金利用の障害となっています。

このような状況を改善するため、島根県ではアスベスト関連の調査業務を県が一括して行う計画を立てています。これにより、個人が手続きを行う手間が軽減される見通しです。

島根県では、県が主体になって2020年度に調査事業に取り組む予定だ。17市町村でアスベスト使用の可能性がある建物の所有者にアンケートを行う。アスベストの有無など検体調査を希望する人には県が代行する。
(引用:新潟日報 2020年1月19日付)

アスベストを含む建物が老朽化の時期を迎えるにつれ、調査の必要がある建物が増えていくことになりますが、島根県が代行して調査業務を行うことによって、調査業務がスムーズに進むことが見込まれます。

今後、このような方式が各都道府県で導入されれば、アスベストを含む建物の調査が進みやすくなります。

アスベストを含む建物が明確化すれば、建物の解体時にアスベストの飛散を防ぐ対策を講じやすくなることから、健康被害の防止に効果が期待できます。

(画像は写真ACより)

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