健康被害を防ぐためにも、アスベスト調査は必須

建物を解体する場合、アスベストが使用されているかどうかを事前調査することが法律で義務づけられています。

アスベストの使用が不明確な状態で解体作業を行うと、建材にアスベストが含まれていた場合、健康被害を引きおこす事態になりかねません。

そのような事態を防ぐためにもアスベスト調査は確実に行う必要があります。

建物解体時、原則として全ての建物で事前調査

建物を解体する場合は、原則として全ての建物で事前調査を行わなければなりません。その理由は2013年に改正され、2014年より施行された大気汚染防止法によるものです。

2013年に法律が改正される前は、建物にアスベストが使用されているかどうかを詳しく調査せずに解体した事例が見受けられました。

その結果アスベストが飛散したケースがみられ、これにより健康被害が引きおこされるのではないかと懸念されていました。

また、1950年代後半から2000年代前半にかけてはアスベストが使用された建物が建築されましたが、その建物の解体は2030年前後にピークを迎える見通しとなっています。

建物の解体によるアスベストの飛散と健康被害を防ぐためにも、建物を解体する前には原則として事前調査を実施する必要があるのです。

事前調査の流れについて

事前調査の流れについて簡潔に説明すると、書面を元にした調査の「一次調査」、現場を確認しながら調査を行う「二次調査」となります。

二次調査の段階で建物にアスベストが含まれていることが判明した場合、調査はそこで終了となりますが、二次調査においてアスベストが含まれているかどうかが不明である場合には、試料を採取してその試料を分析する「分析調査」を行います。

以下の項目ではそれぞれの調査内容について詳しくみていくことにします。

一次調査

一次調査を行う目的は、設計図書や確認申請書、改修工事に関連する図書類など、書面に記載されている内容からアスベストの含有に対するできる限りの情報を集めることです。

また、一次調査を行うことによって、現地調査である二次調査の計画を事前に立てておくことも可能となります。

一次調査においては設計図書等の調査とヒアリングを実施します。設計図書等を調べてどのような建材が使用されているか、建材はいつ製造されたものか、天井や壁、柱などにアスベストが使用されているかどうかを確認します。

そのほか、建築工事の依頼者や立会者、工事を請け負った会社に対してヒアリングも行い、アスベスト使用に関する情報を集めていきます。

ヒアリングと設計図書等の調査によって、建物にアスベストが含まれているかの判定を行います。

二次調査

二次調査は一次調査が終了した後に実施します。二次調査においては各部屋の天井や壁、柱などを調査し、設計図書等に記載されている内容と違いがないかどうかを確認します。

建物に使用されている建材等が設計図書の内容と同じであれば、一次調査の結果をそのまま活かすことができますが、現地調査を行った結果、建材等の使用状況が設計図書の内容と異なっている場合、あらためて診断を行う必要があります。

建材等のアスベストの飛散度合いについてはレベル1~レベル3に分けられています。

レベル1はアスベストを含む吹き付け材が使用されているもの、レベル2はアスベストを含む保温材や断熱材など、レベル3は成形板などアスベストを含む建材です。

このうち、レベル1とレベル2のものについては目視ができないため、アスベストを使用しているという記録がなければ分析調査が必要となります。

また、レベル3のものについては製品のメーカー名や商品名、ロット番号などを読み取り、その情報を元にアスベストが使用されているかどうかが判断できます。

現地調査を行ってもアスベストの使用が不明確である場合は、分析調査に進みます。

分析調査

分析調査では、建材等にアスベストが含まれているかどうかを実際に調査します。

分析調査を実施するためには試料を採取する必要がありますが、レベル1とレベル2のものについてはアスベストが飛散しやすいため、建材等を湿潤の状態にするなどして飛散を防ぎながら採取作業を行います。

採取した試料にアスベストが含まれているかどうかは、顕微鏡を用いる方法やX線を使用して判定します。

アスベストの使用が禁じられた2006年以降は、建物にアスベストは使用されていませんが、それ以前の建物に関してはアスベストが含まれている可能性があります。

古い建物ほどアスベストを使用している可能性が高いですが、今後はそれらの建物を解体する機会が増えるため、アスベストの調査を実施したうえで解体を行わなければなりません。

(画像は写真ACより)

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