古くなった吹き付けアスベストと建物の解体時に注意建築材料などに使用されているアスベストは、繊維状のもので目に見えないほど細かく、肺の中に入り込むと肺がんなど肺の病気にかかることがあります。
しかし、アスベストが使用されている建材の多くはアスベストが内部に含まれていて外側に露出していないため、通常はアスベスト曝露する可能性はほとんどありません。
ただし、建物に吹き付けアスベストが使用されていてそれが古くなっていたり、または周辺で建物の解体工事を行ったりしている場合は、アスベストに曝露してしまう可能性があります。
アスベスト曝露が発生してしまう具体的な事例とその対策方法についてみていくことにしましょう。
建物の内部で吹き付けアスベストが劣化しているケースアスベストを含む建材としては、壁や天井などの内装材や外壁材などに使用している「アスベスト成形板」や、アスベストを含む保温材・耐火被覆材・断熱材、建物に吹き付けて使用する「吹き付けアスベスト」があります。
これらの建材のうち、経年劣化するほどアスベストが飛散しやすくなるのは吹き付けアスベストです。
吹き付けアスベストとは、耐火性や断熱性、吸音性を高めるために鉄骨造の建物に使用されたものですが、吹き付けアスベストの使用が認められていたのは1975年(昭和50年)までで、それ以降は使用されていません。
つまり、1975年以前に建てられた鉄骨造の建物の場合、これまでにアスベスト除去作業が行われていなければ、吹き付けアスベストが古い状態で残っていることとなります。
吹き付けアスベストの表面にくずれが見られたり、垂れ下がりが見られたりする場合、吹付け材が下地から浮き上がっていたり、吹付け材そのものが落下している場合は、アスベストが飛散しやすい状況となっています。
そのような場合は、アスベストの飛散を防ぐためにも建物の管理者、または自治体に確認して、アスベスト飛散防止処理を行ってもらえるように依頼しましょう。
周辺で建物の解体工事を行っている場合建物の解体工事を行う場合、工事の受注者は建物にアスベストが含まれているかどうかを事前に調査する必要があります。
アスベストが含まれていれば、工事開始の14日前までに都道府県知事に特定粉じん排出等作業実施届を、また、吹き付けアスベストが使用されていれば、特定粉じん排出等作業実施届のほかにアスベスト工事の計画書も提出しなければなりません。
ただし、アスベスト成形板の除去作業のみの場合は、これらの届け出の提出は不要です。
このように、アスベストを含む建物の解体工事を行う前には、アスベスト飛散防止対策が念入りに行われる形となります。
しかし、アスベストが含まれているかどうかの調査が不十分である場合、アスベストが含まれていることに気がつかず、十分な対策を行わないまま建物の解体工事が行われてしまうこともあり得ます。
建物の解体工事が行われる場合は、工事業者がアスベストの有無を表示することが一般的であるため、解体現場の周辺で暮らす人たちにとっては、その表示に基づいて判断することが自然といえるでしょう。
建物にアスベストは含まれないと表示されていても、近くで行われる解体工事が気がかりに感じる場合は、洗濯物を外に干さないこと、外出時はマスクを着用することなど、個人的に行える可能な限りの対策をとることも有効といえます。
現在では、アスベストの製造が禁止されるなど、アスベストの対策が万全に行われているため、アスベスト曝露する可能性は非常に低い状態となっています。
しかしながら、古い建物の内部で吹き付けアスベストが劣化している場合や、古い鉄骨造の建物を解体する場合は、アスベストが飛散する可能性があることを理解しておき、極力それらの現場に近づかないようにすることもアスベストの曝露対策となります。
(画像は写真ACより)