いずれの素材も断熱性があり、断熱材に使用される
ロックウールやグラスウールは断熱性が高いことから断熱材に使われています。また、過去には断熱材としてアスベストが使用されていました。
これらの素材は、見た目がほとんど似ているため、一目では違いを見分けるのは困難です。アスベストとロックウール、グラスウールはどのようにして見分ければ良いのでしょうか。
ロックウールとは?
ロックウールとは、玄武岩などの岩石や高炉スラグを原料とする人造の鉱物繊維です。高炉スラグとは、鉱石から金属を取り出すために鉱石を高温で溶融した際に生じる残りかすのことで、鉱物成分が含まれています。
ロックウールの繊維の直径は3~10マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1mm)です。また、耐熱性能が高いため、断熱材の材料として使用されます。
グラスウールとは?
グラスウールとは、ガラス繊維を原料とする人工の繊維です。グラスウールの繊維の太さは3~9マイクロメートルで、ロックウールとほぼ同じ太さとなっています。
断熱性のほかに吸音効果もあるため、グラスウールは断熱材として使用されるほかに防音壁など防音対策としても用いられます。
アスベストとは?
アスベストとは天然の鉱物繊維です。繊維の直径は0.02~0.35マイクロメートルであり、ロックウールやグラスウールの繊維の直径と比較すると非常に細いことがわかります。
耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性など優れた性質を持つ素材であり、かつては建設資材や電気製品など幅広く使用されていました。
しかしながら、アスベストを吸い込んだ場合、肺に入り込むと分解されず肺の病気を引き起こす原因となることから、現在では原則としてアスベストを含む製品の出荷は禁止されています。
ロックウールとアスベストの安全性
アスベストは安全性が認められないのに対し、ロックウールとグラスウールは国際がん研究機関によると「発がん性を分類できない」としています。
その要因として、ロックウールとグラスウールはアスベストと比べると繊維が太く、肺の奥まで繊維が到達しないためと考えられます。
ロックウールとアスベストの見分け方
ロックウールとグラスウールは使用されている原材料が異なりますが、繊維の直径がほぼ同じであり、人造の繊維である点も共通しています。
この項目では、ロックウールとアスベストの見分け方についてくわしくみていきます。見分け方としては、指触、酸、顕微鏡、X線回折法があります。
指触による見分け方
手のひらに物質を置き、指でこすってて見分ける方法です。ロックウールは指でこすると粉々にくだけるのに対し、アスベストは指でこすってもくだけません。
酸による見分け方
酸を使って見分ける方法で、市販されている酢を使うと判断できます。ロックウールは酢酸に溶ける性質がありますが、アスベストは酢酸で溶けません。
ただし、ロックウールを酢酸に浸した場合、完全に溶けるわけではありません。
顕微鏡による見分け方
ロックウールを顕微鏡で見ると、繊維の直径が太く、棒状となっています。アスベストを顕微鏡で見た場合、繊維の直径が細くなっており、それぞれの繊維は束のようになってまとまっています。
ロックウールはアスベストとは異なり、束のようにまとまっていません。
X線回折法による見分け方
X線回折法によってロックウールとアスベストを見分けることも可能です。
回折とは、水の波や音波、X線などの電磁波のように波状の物が物質にあたった場合、その波がどのような動きをするかを分析する方法です。
また、X線回折法とは、物質にX線を当てて、X線がどのような動きをするかを調べることで物質の結晶構造を調べる方法です。物質が結晶状ではなく非晶質の場合は、X線を当てても特に反応がみられません。
ロックウールは非晶質であるため、X線を当てても回折の現象はみられませんが、アスベストは結晶質であるため、X線を当てると回折ピークが発生します。
ロックウールとアスベストを工業的な手法で見分ける場合は、X線回折法が用いられます。
まとめ
アスベストは非常に繊維が細いのに対し、ロックウールとグラスウールはアスベストと比較すると繊維の直径は太めです。
また、アスベストは結晶質であるのに対し、ロックウールとグラスウールは非晶質繊維であるため、X線回折法で判別できます。
それぞれの物質の特徴を理解すれば、ロックウールやグラスウールとアスベストを見分けることが可能となります。
(画像は写真ACより)