2006年に全面禁止になった「静かな時限爆弾」と呼ばれるアスベスト。
大量に吸い込むと長い潜伏期間の後に肺がんなどの重い病気を発症すると言われています。

解体工事等によるアスベスト排出量は今後20年間にピークを迎えると予測されており、環境省は今年度の通常国会に石綿が使われた全ての建物の解体・改修工事について、施工者に事前調査などを義務付ける、大気汚染防止法の改正案を提出する方針で、使用状況を調査したいという需要が急激に高まっています。

2006年以前に建てられた建築物にはアスベストが含まれていると疑ってみる必要があることが国土交通省発行のパンフレットに記載されていますが、特に 1980(昭和 55)年以前に建てられた建築物に多いと言われており、築年数が40年以上経過しているような建造物は調査が急務となっています。

建築物の所有者にアスベスト対策義務がありますが、いざ、アスベスト調査を行おうと考えると、どのような流れで調査を行うのか、費用はどの程度かかるのか、飛散する恐れのあるアスベストが含まれていた場合、具体的に何をすればいいのか、不明点が多いことも事実です。

アスベスト調査を詳しく解説!

 

アスベスト調査は「事前調査」「サンプリング調査」に大別されます。一般的なケースでそれぞれご解説します。

事前調査とは

「事前調査」とは、建物の図面確認、現地での目視確認、ヒアリングにより、アスベストの使用状況を確認するものです。サンプリング箇所なども含め漏れのない調査が必要ですので、 信頼性の高い調査者等の専門家に依頼することがベストです。

※厚生労働省の通達において、「建築物石綿含有建材調査者、石綿作業主任者技能講習修了者のうち石綿等の除去等の作業の経験を有する者及び日本アスベスト調査診断協会に登録された者」など石綿に関し一定の知見を有し、的確な判断ができる者が行うとされています。

まず「図面調査」を行い、調査対象となる建物の設計図書(建築工事の施工時に作成された図面や仕様書などの書類)から使用された建材を調べ、その建材にアスベストが含まれているかどうかを確認します。

ただし、すべての建材が確認できるとは限らず、建材が判明してもアスベストの含有状況は不明ということもあります。
改修があった建物では、建材の記録が残っていないこともありますので、図面調査でアスベスト含有状況を確実に把握することは不可能です。

次に現地調査を行うため、建物を訪問し、目視によってアスベストの使用状況を調査します。一般的に3階以上の鉄骨造の建築物に多いと言われており、防火地域、準防火地域に建てられた建築物、調理室、浴室、乾燥室、ボイラー室がある建築物も要注意です。専門家の知見により、調査対象を選別しながら、使用建材を確認し、アスベストの使用状況をチェックします。

サンプリング調査

「サンプリング調査」とは、アスベストが使用されている可能性のある建材をサンプル(検体)として採取し、そのサンプルの成分分析を行うことで、アスベストの使用状況を精緻にチェックする調査です。サンプル採取では、調査者が採取し、調査機関に分析を依頼します。

サンプル採取においては、アスベストが飛散して健康被害を受ける恐れもあるため、切り出す部分を湿潤化してアスベストの飛散を防止したりマスク等を着用したりするなどの対策をとったうえで採取します。採取したサンプルも、慎重にビニール袋などに梱包・密閉して調査機関へ送付します。

アスベストの成分分析には、アスベストの使用有無を確認する「定性分析」と、アスベストの含有率を測る「定量分析」があります。まず、アスベストが使用されているか定性分析を実施し、アスベストが使われていることが判明したら、アスベストの含有率を確認する定量分析を実施します。
すべての調査が終わったら、調査機関から報告書が提出されますので、アスベストの除去工事や解体工事の必要性などを検討します。

アスベスト調査費用の相場

 

アスベスト調査の費用相場は、事前調査は図面調査・現地調査それぞれ3万円前後、サンプリング調査は、調査の検体採取の数や範囲で異な理ますが、5万円〜10万円前後の費用が必要と言われています。

さらに、報告書を何部用意するかなどによっても調査費用は大きく変わります。調査費用の料金体系は、調査機関によってさまざまです。アスベスト調査を依頼する際には相見積もりを依頼するなどして、比較検討することをオススメします。

調査を依頼する際は有資格者が在籍する専門機関で

 

アスベスト調査が可能な機関を調べるには、「適切な技術を有している」と判断するための一定の目安になるのが、担当者の資格の保有です。

アスベストの分析調査や粉塵濃度の測定を実施するためには、公益社団法人日本作業環境測定協会が実施する「石綿分析技術の評価事業(石綿分析に係るクロスチェック事業)」でのAランクまたはBランク認定や、国土交通省が付与する「建築物石綿含有建材調査者」の資格取得が必要とされています。

調査機関としての信頼性をはかるには、厚生労働大臣または都道府県労働局長による「作業環境測定機関」の登録や、これまでの調査実績、特に公的機関に提出した調査報告書の実績などが参考になります。

おわりに

 

過去にアスベスト調査を行い基準値をクリアしたことがある建造物でも、アスベストの含有比率の準値値が変更されていたために、現時点では基準値をオーバーしていたり、過去には全く規制を受けていなかったアスベストの種類が後々規制対象になったというケースもありますので、過去にアスベスト調査を行った建物であっても、その時期や状況によっては再度アスベスト調査を行う必要がある場合もあります。

健康被害を未然に防ぎ安全を守るために、アスベスト調査が必ず必要になる時代となりました。信頼できる調査機関と出会える、ご参考となれば幸いです。

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