微細で変化しにくい性質が肺の病気を引き起こす
アスベストは肺の疾病を引き起こすことで知られていますが、その理由としては、アスベストが非常に細かい物質で空気中を浮遊すること、アスベストは繊維状の鉱物であり、変化しにくい性質が関係しています。
アスベストが健康被害を引き起こすメカニズムについて具体的にみていくことにしましょう。
アスベストは目に見えないほど細かい繊維
アスベストが健康被害を引き起こすメカニズムについては、アスベストが目に見えないほど細かい物質であることを知ることで理解が進みます。
アスベストとは天然の鉱石の一種ですが、繊維状であることが特徴です。アスベストの繊維の直径は種類によって異なりますが、0.02~0.35マイクロメートルほどです。
1マイクロメートルとは0.001mmですが、アスベストは直径1マイクロメートルにも満たないことから、いかに極小であるかが分かります。
また、アスベストは非常に細かい繊維であるために空気中を浮遊する性質があります。
それに加え、先ほど説明したとおりアスベストは目に見えないほど細かい物質であることから、アスベストが空気中に浮遊している場合、呼吸をしていると知らず知らずのうちに肺の中に入り込んでしまうことがあるのです。
私たちは空気中に舞っている物質、例えば目に見えないホコリなどを吸い込んでしまうことがありますが、肺の中に異物が入ってしまった場合、その異物は痰(たん)に交じって排出されます。
そのほかにも、綿などのように自然に分解される物質が肺に入り込んだ場合、肺の中の細胞によって分解されるため残ることはありません。
しかし、アスベストは鉱物であるため変化しにくく、肺の中に入ってしまうと分解されることなく肺の中に残ってしまうのです。
肺の中に残ったアスベストが炎症を引き起こす
なぜ、肺の中にアスベストが残ってしまうと肺の病気を引き起こすのでしょうか。
その理由として考えられるのが、肺の中に残ったアスベストが長期間にわたって炎症を起こしてしまうことです。
肺の中で炎症が続いてしまうと肺の臓器が硬くなってしまい、臓器としての機能を果たせなくなる「線維化」の状態となりますが、それを原因とする病気は「石綿肺」と呼ばれます。
そのほか、肺の細胞が炎症化することによって活性酸素が発生することがありますが、活性酸素は細胞のDNAを損傷する原因となります。
DNAが損傷することによって細胞の遺伝子が変化してしまうため、正常な細胞が生成されずがん細胞ができてしまうことがあるのです。これによって「肺がん」の症状が発生します。
そのほか、アスベストが原因で肺の組織に腫瘍ができた場合は、「中皮腫」となります。
アスベストの種類によって発がん性は異なる
アスベストとは繊維でできている鉱物の総称ですが、アスベストは大きく分けると「蛇紋石(じゃもんせき)系」と「角閃石(かくせんせき)系」となります。
蛇紋石系のアスベストには「白石綿」があり、角閃石系のアスベストには「青石綿」や「茶石綿」があります。
このうち、毒性の強いアスベストは角閃石系です。白石綿は別名「温石綿」と呼ばれて柔らかい性質を持っているため、角閃石系のアスベストと比べると毒性が抑えられます。
一方、青石綿は繊維がとがっているため、肺の組織に入り込むと炎症が発生しやすくなるのです。
なお、現在ではアスベストの使用は禁止となっていますが、アスベストを原因とする肺の病気は潜伏期間が15年~50年程度と非常に長いことが特徴です。
過去にアスベストに関する業務に従事していて、息苦しいなどの症状が出た場合や、アスベストに関連する症状が気になる場合は、アスベストを専門とする医療機関に相談しましょう。
(画像は写真ACより)