補償内容が不服の場合は賠償請求を
アスベストによる健康被害が生じた場合の補償は、労災保険、あるいは石綿健康被害者救済制度から支給されることになりますが、補償内容や支給額が不服である場合には、賠償請求を行うことが可能です。
損害賠償請求は弁護士を通じて行いますが、アスベスト関連の弁護に詳しい弁護士による弁護団も組織されており、訴訟の内容によっては国家に対する賠償訴訟が行われることもあります。
賠償請求を行う方法は?
アスベストに関連する作業が原因で健康被害が発生した場合、一般的には労災保険や石綿健康被害者救済制度において補償を受けられます。
企業に勤務してアスベスト関連の作業にたずさわり、それが原因でアスベストの健康被害が生じた場合には労災保険からの補償となります。
また、近くにあったアスベスト関連の工場が原因で健康被害が発生した場合など、健康被害の原因が勤務中以外の場合は労災保険が適用されないために石綿健康被害者救済制度による補償を受けます。
なお、労災の認定が降りたとしても、多くの企業においてはアスベストの被害者に対する補償制度を設けていないため、健康被害を受けた人と企業の間で賠償金額を交渉しますが、交渉内容によっては両者が納得しない場合があります。
そのような状況となったときは弁護士を通じて訴訟を行い、企業に対して賠償請求を行う形を取ります。
また、アスベストによる健康被害が発生した原因は、国の対応不足の場合もありますが、そのような場合は国を相手取って賠償請求を行うこともあります。
アスベストに関する訴訟を行う「アスベスト弁護団」
アスベストに関する弁護を専門的に行うのが「アスベスト弁護団」です。
アスベスト弁護団に所属する弁護士は、アスベストの健康被害を受けた人を対象とした法律相談や訴訟を行ってきた実績があり、東日本を中心に活動する「関東弁護団」と西日本を中心に活動する「関西弁護団」があります。
アスベスト弁護団の特徴としてあげられることは、国家賠償訴訟において国と和解した事例がある点です。
なお、国が賠償訴訟において和解する条件としては以下のものがあります。
・昭和33年5月26日から昭和46年4月28日までの間に、局所排気装置を設置すべき石綿工場内において、石綿粉じんにばく露する作業に従事したこと
(注記略)
・その結果、石綿による一定の健康被害を被ったこと
(注記略)
・提訴の時期が損害賠償請求権の期間内であること
(注記略)
(引用:厚生労働省ホームページ)
なお、石綿による一定の健康被害とは、石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚などを指します、また、損害賠償請求権の期間内に関しては弁護士の判断を仰ぐことが確実です。
国家賠償訴訟における賠償金額はどのくらい?
アスベストの健康被害において国家賠償訴訟を行い、国との間で和解に至った場合、国から賠償金が支払われます。
賠償金の金額は生存・死亡によって異なり、内容は以下の通りとなります。
(1)じん肺管理区分の管理2で合併症がない場合:550万円
(2)管理2で合併症がある場合:700万円
(3)管理3で合併症がない場合:800万円
(4)管理3で合併症がある場合:950万円
(5)管理4、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚の場合:1150万円
(6)管理2・3で合併症がない状態で死亡の場合:1200万円
(7)石綿肺(管理2・3で合併症あり、または管理4)、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚で死亡した場合:1300万円
(引用:厚生労働省ホームページ)
このほか、遅延損害金と弁護士費用は別途支払われます。
アスベストによる健康被害は、アスベストを吸い込んでから発症するまでの時間が長いこと、そして発症してしまうと疾病に苦しみながら生活を送ることになります。
治療には費用がかかるだけでなく、精神的なつらさも重くのしかかります。それらを少しでも和らげるために賠償請求を検討している場合は弁護士に相談しましょう。
(画像は写真ACより)