基準に基づいてアスベスト調査を実施し、安全性を確保
アスベストは肉眼では確認できないほど細かい物質で、なおかつ肺に入り込むと健康被害の原因となります。
そのため、建材にアスベストが含まれている可能性がある場合、アスベスト調査を実施しなければなりません。アスベスト調査を安全に実施するための基準は、国土交通省が制定した各種の仕様書に記載されています。
仕様書を用いて作業することで効率性が向上
アスベストの調査をする場合に必要となる仕様書としては、国土交通省が制定した「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)」と「建築物解体工事共通仕様書」の二種類があります。
いずれの仕様書とも、官庁施設の増築・修繕工事をする場合の基準として設けられたものです。前者の仕様書は、官庁施設の改修工事を行う場合に必要となるものであり、後者の仕様書は、官庁施設の解体工事を行う場合に必要となります。
公共建築物の改修工事、または解体工事を行う場合に上記の仕様書を参考にすることで、設計図書の作成業務が効率化されるほか、施工も合理化されます。
仕様書に調査方法に関する詳細が記載
アスベスト含有建材の調査に関する基準については、上記2種類の仕様書ともに同じ内容が記載されています。
記載内容は以下の通りです。
石綿含有建材の調査は、次による。
(ア)調査範囲、既存の石綿含有建材の調査報告書の貸与等は、特記による。
なお、分析による石綿含有の調査を行う場合は、「建材中の石綿含有率の分析方法について」(平成18年8月21日 基発第0821002号、最終改正 平成28年4月13日 基発0413第3号)に基づく方法により、分析方法は特記による。
(イ)調査は、目視、設計図書、石綿有無の調査報告等により確認し、調査結果をとりまとめ監督職員に提出する。
(ウ)調査の結果、設計図書と異なる場合は、監督職員と協議する。
(引用:国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)」および「建築物解体工事共通仕様書」)
上記の記載内容についてくわしくみていくことにします。
アスベストを含む調査の範囲を決めることと、アスベストを含む建材に関する調査報告書の貸し出しは「特記による」と書かれています。
これらの方法に関しては、各現場において方法が異なるため、仕様書ではこれらの方法について規定せず、各現場に応じた方法で対応することにしています。
なお、アスベストの含有状況について分析調査を行う場合は、「建材中の石綿含有率の分析方法について」という通達に記載されている方法を用いなければなりません。
分析調査の方法については、次の項目でくわしく説明します。
アスベストの含有を分析する各種の方法
「建材中の石綿含有率の分析方法について」に記載されている分析方法は、JIS A 1481-1からJIS A 1481-4までの4種類があります。具体的な方法は以下の通りとなります。
JIS A 1481-1 第1部:市販バルク材からの試料採取及び定性的判定方法
JIS A 1481-2 第2部:試料採取及びアスベスト含有の有無を判定するための定性分析方法
JIS A 1481-3 第3部:アスベスト含有率のX線回折定量分析方法
JIS A 1481-4 第4部:質量法及び顕微鏡法によるアスベストの定量分析方法
分析調査を行うにあたり、どの分析方法を用いるかは各現場の状況に応じて適切な方法を選びます。
分析方法は、大きく分けると「定性分析」と「定量分析」となります。定性分析とはアスベストが含まれているかどうかを調べるものです。
なお、この場合のアスベストが含まれているという基準は、物質の質量に対して0.1%を超える重さのアスベストを指します。0.1%超という数値は、アスベストの規制対象となる数値のことです。
定量分析とは、物質の質量に対してアスベストが何%含まれているか、ということを調べる方法です。
定性分析や定量分析は、顕微鏡を用いる方法やX線を用いる方法など、さまざまな方法で行われます。
アスベストの使用状況を確認後、監督職員に報告
建材にアスベストが使用されているかどうかは、目視による確認、設計図書の記載事項に基づいた調査、分析調査の結果などに基づいて確認します。調査結果をとりまとめたら、監督職員に提出します。
なお、調査を行った結果、設計図書の記載内容と実際の状況が異なる場合は、監督職員と相談のうえ、対応方法を決める形となります。
アスベスト含有調査の現場で使用する仕様書 記載されている内容は?
アスベスト含有調査が行われる場合、国土交通省が制定した仕様書の内容に基づき、国の機関が調査を実施するための仕様書を作成します。
アスベスト含有調査を行う企業は、仕様書の内容に基づいて調査業務を行います。
仕様書に記載される主な内容は以下の通りです。
・業務名
→業務の名称を記載
・総則
→契約条項のほかに、どのような法令に基づいて作業を行うかを記載
・業務の目的
→業務の目的を記載
・履行場所および調査対象建物
→調査を行う場所の住所と建物の名称を記載
・調査概要
→調査の方法、調査箇所を記載
・調査報告書
→どのような調査報告書の作成が必要かを記載
・貸与資料
→調査を行うにあたり、どのような資料を借り受けるかを記載
・特記事項
→作業における補足などを記載
・成果品
→調査終了後に提出する書類を記載
・疑義
→作業中に問題が発生した場合の対応方法について記載
そのほか、建物の位置図などもあわせて添付されます。
まとめ
建材にアスベストが使用されているかどうかの事前調査は、建物の解体処理を安全に進めるために行われるものです。
アスベストは目に見えないだけでなく、非常に細かい物質であり、健康被害をおよぼす原因になることから、アスベストの飛散を防ぐためには、アスベスト含有の調査をあらかじめ行う必要があります。
国土交通省が制定した仕様書の内容に基づき、アスベスト調査を安全に進めていきましょう。
(画像は写真ACより)