一見すると似ているが、分析内容は異なる

アスベスト分析の方法としては、「定性分析」と「定量分析」の2種類があります。分析の名称だけを見るとよく似ていますが、分析内容は異なります。

「定性分析」と「定量分析」、それぞれの分析方法について説明するほか、具体的な分析方法についても紹介します。

「定性分析」と「定量分析」の違いは?

アスベストの分析方法である「定性分析」と「定量分析」の違いは以下の通りとなります。

・定性分析:アスベストの有無を調査
・定量分析:アスベストの含有率を調査

アスベストが含まれているかどうかを調べるためには定量分析を行い、アスベストがどの程度含まれているかを調べるためには定量分析を行います。

いずれの分析方法も、試料を採取して検査する点では同じですが、分析の仕方によってアスベストが含まれているかどうか、あるいはアスベストがどの程度含まれているかを調べられます。

定性分析 偏光顕微鏡法

定性分析の方法として「偏光顕微鏡法」があります。アスベストを分析する方法は厚生労働省によって指定されており、偏光顕微鏡法は日本工業規格の「JIS A 1481-1」が該当します。

偏光顕微鏡を使用すると、偏光と呼ばれる光を試料に当てることで試料の色の変化や輝度を観察することができます。なお、偏光とは光の振動が規則的であるものを指します。

アスベスト繊維そのものは一般的な顕微鏡である実体顕微鏡で観察できますが、アスベストの種類までは判別できません。判別するためには偏光顕微鏡を利用します。

実体顕微鏡で確認した繊維に特定の液剤を浸し、偏光顕微鏡で観察すると、アスベストの種類によって色が変化したり、光の屈折の状態を調べたりすることができます。

偏光顕微鏡で観察した状況に基づいて、アスベストの種類を特定することが可能となります。

定性分析 X線回折分析法・位相差分散顕微鏡法

そのほか、定性分析の方法として、「X線回折分析法」と「位相差分散顕微鏡法」があります。これらの分析方法は、日本工業規格の「JIS A 1481-2」が該当します。

X線回折による分析とは、試料にX線を照射した場合に、X線がどのような反応するかを調べたうえで、アスベストの種類を特定する方法です。

ただし、X線回折分析法では、アスベストの種類のうち、トレモライトとアクチノライトを判別することができません。それを判別するための方法が「位相差分散顕微鏡法」です。

位相差分散顕微鏡法では、アスベストを特殊な液剤に浸し、顕微鏡で観察します。アスベストの屈折率に基づいてアスベストの種類を判断します。

定量分析 X線回折分析法

X線回折分析法は、定性分析のほかに定量分析でも行われます。この分析方法は、日本工業規格の「JIS A 1481-3」が該当します。

X線回折装置を利用して試料にX線を照射すると、アスベストが含まれている場合にはX線が反射します。反射したデータをくわしく調べることにより、資料に含まれているアスベストの質量が求められます。

なお、たいていはアスベストの含有率が低いため、試料を作る際に加熱処理をして試料の質量をできる限り減らしておくことで、より正確な含有率を測定できます。加熱後の試料の質量を加熱前の試料の質量で割れば、減量率が求められます。

試料の質量とアスベストの質量、減量率がわかれば、以下の計算式でアスベストの含有率が計算できます。

C=(As÷M)× r ×100

C:アスベスト含有率
As:アスベストの質量
M:加熱前の試料の質量
r:減量率

定量分析 質量法および顕微鏡法

定量分析において偏光顕微鏡法を用いると、アスベストを含む可能性のある天然鉱物についても検査を行うことができます。この分析方法は、日本工業規格の「JIS A 1481-4」が該当します。

この分析では「ポイントカウント法」が用いられます。ポイントカウント法とは、鉱物を一定の範囲ごとに区切り、その範囲の中にどんな種類の鉱物がどの程度含まれているかを調べる方法です。

それにより、鉱物に含まれるアスベストの比率が求められます。

この分析方法では、灰化、酸処理によって試料の質量を減らし、浮遊沈殿法によって鉱物の表面に付着していたアスベストを集めます。

ただし、浮遊沈殿法で処理すると、水に溶けない固体の物質である「懸濁物」が浮遊する場合がありますが、その中にアスベストが含まれることがあります。

それに関しては、懸濁物をろ過して残った分である「残渣」の質量を求めます。ポイントカウント法によって求められたアスベストの比率と懸濁物の残渣の質量を掛けることでアスベストの質量が求められます。

アスベスト含有率は以下の計算式で求められます。

C=(100÷W)×(M+R×A÷N)

C:アスベスト含有率
W:試料の質量
M:浮遊沈殿法によって集められたアスベストの質量
R:懸濁物をろ過した残渣の質量
A:ポイントカウント法で求められたアスベストの量
N:ポイントカウント法によって求められた全ての鉱物の量
※Nにはアスベストも含まれる

まとめ

アスベストの定性分析とは、アスベストが含まれているかどうかを調べるものであり、定量分析とはアスベストがどの程度含まれているかを調べるものです。

単にアスベストの含有状況を知りたい場合には定性分析で十分ですが、アスベストの含有量も知りたい場合には定量分析が適しています。

目的に応じて分析方法を選び、アスベストに関する不安を解消しましょう。

(画像は写真ACより)

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