安心・安全な作業環境構築には健康診断の受診は必須

アスベストに関する作業を行っている場合、アスベストの粉じんが発散することによって健康被害が生じることがあります。厚生労働省では、石綿(アスベスト)ばく露作業による労災認定などを受けた労働者が所属していた事業場の名称、所在地、作業状況などの情報等を公表していいますので、参考にしてください。

それを防ぐために、アスベスト関連の業務にたずさわる労働者は一般健康診断のほか、石綿健康診断と塵肺健康診断の受診が義務づけられています。

出典:厚生労働省「石綿ばく露作業による労災認定などを受けた労働者が所属していた事業場等の公表」

一般健康診断

一般健康診断とは、企業において労働者の健康維持を目指すため、医師によって行われる診断のことです。また、一般健康診断は法律に基づき、事業主が実施することが義務づけられています。

なお、一般健康診断は雇い入れた時点に実施するほか、1年以内ごとに1回実施します。

一般健康診断で行われる内容としては、以下のものがあります。
・既往歴および業務歴の調査
・自覚症状および他覚症状の有無の検査
・身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
・胸部エックス線検査
・血圧測定
・貧血検査
・肝機能検査
・血中脂質検査
・血糖検査
・尿検査
・心電図検査

労働者はこれらの検査を受けることにより、生活習慣を改善して病気の予防に役立てられるほか、病気を早期に発見することによって、症状が軽ければ短い期間で病気を治療することが可能となります。

石綿健康診断

石綿健康診断とは、アスベストの粉じんが発散する場所で作業する労働者を対象として実施される健康診断のことです。

石綿健康診断は雇い入れたとき、またはアスベストを扱う業務を担当することになった時点で実施されるほか、6か月以内ごとに1回実施されます。

石綿健康診断は一次健康診断と二次健康診断に分かれており、一次健康診断はアスベストを取り扱う作業者全員が受診します。

一次健康診断の診断内容は以下の通りです。
・業務の経歴の調査
・石綿によるせき、たん、息切れ、胸痛等の他覚症状又は自覚症状の既往歴の有無の検査
・せき、たん、息切れ、胸痛等の他覚症状又は自覚症状の有無の検査
・胸部エックス線直接撮影による検査

二次健康診断は一次検査において異常が認められた場合に行われるもので、より詳しい検査が実施されます。

二次健康診断の診断内容は以下の通りです。
・作業条件の調査
・特殊なエックス線撮影による検査、喀痰の細胞診又は気管支鏡検査
(上記の検査は、胸部エックス線直接撮影において異常な陰影が発見され、医師が必要と判断した場合に実施)

出典:厚生労働省「石綿作業従事者に対する健康診断」

塵肺健康診断

塵肺健康診断とは、常に粉じんが発散している場所で業務を行っている労働者を対象として実施するもので、「じん肺法」を根拠としています。塵肺健康診断には以下の4種類があります。

・就業時健康診断
・定期健康診断
・定期外健康診断
・離職時健康診断

就業時健康診断は雇い入れたとき、または配置換えで新たに業務にたずさわった時点で実施します。

定期健康診断を実施する頻度は「じん肺管理区分」によって異なります。

じん肺管理区分とは、じん肺の症状の度合いを数値で表したもので管理1から管理4までに分けられており、数値が大きくなるほど症状が重くなります。

なお、管理1の場合は業務を行うにあたって特別な措置はなく、管理4の場合は療養が必要な状態を指します。そのため、管理4の場合は健康診断を行う必要がなく、管理1から管理3の場合にのみ塵肺健康診断が行われます。

定期健康診断を実施する頻度は、管理1の場合は3年以内ごとに1回、管理2と3の場合は1年以内ごとに1回となります。

定期外健康診断とは、その都度必要に応じて実施される健康診断のことです。定期外健康診断が実施される条件は以下の通りとなります。
・管理1の労働者にじん肺の疑いがある場合
・合併症により1年を超えて休業していた者が職場復帰をするとき
・合併症により1年を超えて療養した労働者が療養を要しないと診断されたとき
・過去に粉じん労働に従事していた管理2の労働者が、一般健康診断において肺がんの疑いがあると診断された場合
(肺がんの疑いがない、と診断された場合は定期外健康診断は不要)

離職時健康診断とは、過去に粉じん労働に従事していた労働者から「塵肺健康診断を行ってほしい」と求められた場合に実施する健康診断のことです。

塵肺健康診断においては、以下の検査が行われます。
・エックス線写真による検査
・胸部に関する臨床検査
・肺機能検査

最初にエックス線写真による検査が行われますが、エックス線写真による検査でじん肺の疑いがある場合には、胸部に関する臨床検査と肺機能検査を行う必要があります。

石綿健康診断と塵肺健康診断は、一見すると同じような健康診断のように感じられますが、石綿健康診断は労働中の安全確保を目的とした「労働安全衛生法」に基づいたものであり、塵肺健康診断は「じん肺」という疾病のために定められた「じん肺法」に基づいています。

労働安全衛生法もじん肺法も石綿に関することが明記されていることから、アスベストに関する業務にたずさわる場合には、石綿健康診断と塵肺健康診断の両方を受ける必要があるのです。

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