過去にはアスベストを原料としてさまざまな製品が製造

現在ではアスベストの利用が禁止されていますが、過去にはアスベストを原料としてさまざまな製品が作られてきました。

アスベストを原料とする製品のほとんどは建材でしたが、摩擦材や紡織品が作られていたこともあります。今回は、アスベストを原料として作られた「石綿工業製品」についてみていきます。

さまざまな用途に利用されたアスベスト製品

アスベストを含む製品は、建材製品と石綿工業製品に分けられます。

社団法人日本石綿協会(現・一般社団法人JATI協会)が1996年に公表した「わが国における石綿製品等の使用状況」によると、各製品の割合は建材製品が93.0%、石綿工業製品が5.6%、その他の不明石綿工業製品が1.4%でした。

建材製品が圧倒的に多く、石綿工業製品はごく一部にとどまっていることが分かります。

石綿工業製品をさらに分類すると以下の5種類に分けられます。
・ジョイントシート
・産業用摩擦材
・紡織品
・石綿板
・その他の石綿製品

石綿工業製品に関する理解をより深めるためには、アスベストの性質を知っておくことがポイントとなります。

アスベストとは天然の鉱物ですが、繊維状であることが特徴です。アスベストは、耐熱性、耐久性、耐薬品性、電気絶縁性を有しており、あらゆる面において優れた性質を持っています。

また、アスベストは繊維状であることから加工も容易で、さまざまな製品に活用されてきました。

石綿工業製品の種類と用途は?

アスベストを含む製品の多くは建材であることについて先述しましたが、アスベストの特質を活かしてさまざまな工業製品が製造されました。

ジョイントシートジョイントシートとは、配管や各種機器からの液漏れを防ぐための「ガスケット」に使用されるシール材のことです。

ジョイントシートにアスベストが使用された理由は耐熱性の高さにあります。配管に温度の高い液体が流れたり、各種機器が作動したりすることで高温になった場合、液漏れを防ぐためには耐熱性の高い素材が求められます。

その条件はアスベストのジョイントシートが満たしましたが、アスベストの使用が禁止されたため、現在では高熱に耐えられる他の素材でジョイントシートが製造されています。

産業用摩擦材

摩擦材に求められる働きは、動いている物体を止めること、動力の伝達・遮断です。前者の働きに対応できる部品はブレーキであり、後者の働きに対応できるのはクラッチです。

摩擦材に求められる性能としては、温度や湿度が変化しても摩擦力が変わらないこと、引っ張り、曲げに対する強度、耐久性などがあります。

摩擦材にはさまざまな性能が求められますが、アスベストがこれらの性能を満たしていたことから、かつては摩擦材にも利用されていました。

紡織品

アスベストを含む紡織品の例としては防火カーテンがあります。

アスベストは鉱物でありながら繊維として存在しているため、紡織品として加工することができました。アスベストの繊維を紡織することで石綿糸を作り、その糸から防火カーテンが製造されました。

アスベストは耐火性に優れているため、アスベストでできた防火カーテンは防火の効果が期待できますが、アスベストの使用が禁止されたため、現在では防火カーテンの素材として熱に強いポリエステルが使用されています。

石綿板

石綿板は、耐熱・電気絶縁板として配電盤などに利用されてきました。

配電盤とは建物内で使用する電気を外部から受け、建物内の各所に電気を送る設備です。配電盤を流れる電気を安全に取り扱うため、電気を送るだけでなく、必要に応じて電気を遮断する機能も求められますが、かつては石綿版が電気絶縁板として利用されました。

アスベストは電気絶縁性が高い性質があるものの、アスベストの使用が禁止されたため、現在では使用されていません。

このように、過去にはさまざまな石綿工業製品が作られましたが、2006年にアスベストの使用が全面的に禁止されたため、現在では石綿工業製品が使用されているケースは非常に少ないとみられます。

(画像は写真ACより)

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