アスベストのレベルは数字が小さいほど危険性が大建設業において労働災害の防止に努める団体「建設業労働災害防止協会」は、アスベストによる健康被害を防ぐため、アスベストのレベルを1~3に分けています。

レベル1はアスベストの危険性が最も高く、レベル3はアスベストの危険性が比較的低めとなります。今回はアスベストのレベル1について詳しくみていくことにします。

アスベストのレベル1は発じん性が非常に高い状態アスベストのレベル1とは、アスベストの発じん性が非常に高い状態のことです。

発じん性とは粉じんなどの細かい物質が空気中に飛散する性質のことを指します。アスベストは鉱物を原料とする繊維であり、目に見えないほど細かいことから飛散する性質を持っています。

レベル1に当てはまる建材の種類には「石綿含有吹付け材」があります。アスベストを含んだ吹付け材とは、アスベストとセメントに水を加えて混ぜ、吹き付けられるようにしたものです。

吹付け材は、主に鉄骨造の建物に使用されていました。吹付け材の用途としては、耐火被覆材、断熱材、吸音材となります。

耐火被覆材として、鉄骨のはりや柱などに吹き付けたほか、断熱材や吸音材としてはビル内の機械室やボイラー室、工場の天井や壁などに使われました。

吹き付けアスベストが使用されたのは、断熱、吸音用としては1956年(昭和31年)頃から、耐火被覆用としては1963年(昭和38年)頃からですが、1975年(昭和50年)に使用が禁止されます。その理由は、材質の重さに対してアスベストの重さが5%を超える場合、アスベストの使用が原則禁止となったためです。

そのため、吹き付けアスベストが使用されている建物が建てられたのは、アスベストの使用が規制された1975年以前のものに限られます。

吹き付けアスベストはセメントよりもアスベストの量が多いこともあり、吹き付けしてからの年数が経過し、吹付け材そのものが劣化することによってアスベストが飛散しやすくなってしまいます。

つまり、吹き付けアスベストが使用されている建物は、アスベストによる健康被害を受けやすいことから、アスベストの危険性が特に高いレベル1に区分されているのです。

レベル1で行う作業と作業の注意点は?レベル1で行う作業は、石綿含有吹付け材の除去作業とアスベストの封じ込め作業です。

アスベストの発じん量が非常に多いため、アスベストが周囲に飛散することのないよう、作業場所の隔離を行う必要があること、また、作業者がアスベストを吸い込んでしまうことのないように、高濃度の粉じんに対応したマスクと保護衣を着用したうえで作業を行います。

作業場所を隔離するためには、プラスチックシートを使用して壁面と床面を養生し、出入り口以外の場所を全て目張りして密閉します。

また、密閉した作業場内部から外側へアスベストの粉じんが漏れることを防ぐため、負圧除じん装置を使って室内のアスベストを吸着したうえで、きれいな空気を外部に排出します。

これによって、室内の空気は負圧除じん装置を経由して外へと流れることになるため、アスベストを含む室内の空気は出入り口から外へと流れる心配がありません。

レベル1で使用する保護具は「全面形プレッシャデマンド形エアラインマスク」、または「電動ファン付き呼吸用保護具」と呼ばれるものを使用します。

全面形プレッシャデマンド形エアラインマスクとは、作業者が着用するマスクとエアホース、エアタンクが一体化したもので、外部から保護具の内部に空気を送り込みます。

電動ファン付き呼吸用保護具とは、保護具のフィルターを通じて室内の空気中に含まれる粉じんを除去する効果があり、電動ファンを利用して粉じんが含まれない空気を着用者に対して送風する保護具のことです。

これらの保護具を使用すれば、保護具の内部へと常に空気が送られている状態となって内部の空気圧が高まるため、保護具の外側に存在するアスベストを含む空気が保護具の内部に入りこむことを防げます。

保護衣は全身を覆うタイプのものを着用し、シューズカバーと手袋も合わせて着用します。

レベル1のアスベストを取り扱う場合は、十分な装備と万全の対策を行って健康被害の発生防止に努めましょう。

(画像はPixabayより)

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