アスベスト規制は1970年代から本格化

アスベストの健康被害は戦前から問題になっていましたが、本格的な対処に乗り出したのは戦後のことであり、使用量に関する具体的な規制値を初めて設けたのは1975年(昭和50年)のことでした。

平成の時代に入り、アスベストに関する規制はさらに強化され、現在では原則としてアスベストの使用は認められていません。

しかしながら、アスベストの健康被害は長い年月を経た後に生じる場合があります。健康被害に対処するためにも、アスベスト規制の歴史について理解しておきましょう。

じん肺法と特定化学物質予防規則の制定

アスベストは、熱に強く耐久性に優れている性質を持っていることから、20世紀に入ってから世界的に広く使用されるようになりました。

アスベストによる健康被害は第二次世界大戦以前から問題化していましたが、その問題の解決に向けて取り組むようになったのは戦後になってからのことです。アスベスト問題に対処するため、労働省(現・厚生労働省)は1960年(昭和35年)、「じん肺法」を施行しました。

同法で定められた内容としては、粉じん作業に従事した労働者は定期的にじん肺健康診断を受けること、労働者がじん肺管理区分の決定を受けているにもかかわらず粉じん労働を行っている場合、都道府県労働基準局長は使用者に対し、粉じん作業以外の作業に従事させるよう勧告できることなどがあります。

1971年(昭和46年)には「特定化学物質等障害予防規則」(以
下、特化則)が制定され、アスベスト等の製造、取扱い作業についての管理規則が設けられました。主な内容としては、排気装置の設置、特定の作業において湿潤化、保護具を使用することなどがあります。

1975年 5重量%を超えるアスベストの吹き付け禁止

1975年(昭和50年)になると特化則が改正され、アスベストの吹き付け作業の原則禁止など、建設・解体現場における対策措置が設けられます。

特化則の改正により、5重量%を超えるアスベストの吹付けが原則として禁止されました。重量%とは、ある物質100gの中に含まれる特定の物質の割合を示すものであり、この場合は、吹付け材100gあたりアスベストが5gを超えているものが使用禁止の対象となります。

なお、鉄骨の耐火性を高める目的や吸音・結露防止を目的としてアスベストの吹き付け作業を行う場合、アスベストは60~70重量%程度含まれており、5重量%程度ではこれらの目的を満たすことができないため、アスベストの吹き付け作業は実質的に行えない形となりました。

その後も、アスベストの含有率が5重量%以下である吹き付けロックウールが1980年(昭和55年)頃まで、湿式の吹き付けロックウールは1988年(昭和63年)頃が使用されていました。

1995年 1重量%を超えるアスベストの吹き付け禁止

1995年(平成7年)には、労働安全衛生法施行令、労働安全衛生規則、特化則がそれぞれ改正されます。

労働安全衛生法施行令の改正では、青石綿、茶石綿およびこれらを含む製品の製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止され、労働安全衛生規則の改正では耐火建築物などのアスベスト除去作業を行う場合、計画を届け出ることが義務づけられました。

また、特化則の改正では、特定の作業における保護具、作業衣などの使用、解体工事におけるアスベスト等の使用状況の調査、吹き付けられたアスベストなどの除去作業における作業場所の隔離、それぞれの項目において規制が強化されました。

1975年の時点で、5重量%を超えるアスベストの吹付けが禁止されましたが、1995年にはさらに強化され、1重量%を超えるアスベストの吹付けが禁止となります。

2004年 アスベストを含む建材等の使用禁止

2003年(平成15年)には労働安全衛生法施行令が改正されました。

アスベストに関する内容としては、1重量%を超えるアスベストを含む建材、摩擦材、接着剤などの製造、輸入、譲渡、提供、使用が原則として禁止するものです。同施行令は2004年(平成16年)に施行されました。

さらに、2006年(平成18年)の同施行令改正により、0.1重量%を超えるアスベスト含有製品の製造や使用などが禁止され、現在に至ります。

現在ではアスベストの健康被害を負う可能性は非常に少ないといえますが、過去にアスベストを取り扱う業務を行っていた場合は、健康被害が生じることも考えられます。

健康被害に対処するためにも、アスベストがいつ頃までどの程度使用されていたのか、ということについては把握しておきたいところです。

(画像は写真ACより)

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