建物を解体する場合は、周辺住民の健康にも配慮を
アスベストを含む建物を解体する場合、アスベストの健康被害を防ぐ必要がありますが、建物の解体においては、作業員のみならず周辺住民の健康にも十分に配慮しなければなりません。
そのため、アスベストの解体工事を行う場合には各種の掲示が必要です。掲示しなければならない内容をあらかじめ確認しておきましょう。
建築物等の解体等の作業に関するお知らせ
建物の解体工事を行う場合は、周辺住民に告知するため「建築物等の解体等の作業に関するお知らせ」を掲示します。なお、作業レベル1または2と作業レベル3では記入内容が異なります。
作業レベル1~3までに共通する記入内容は以下の通りです。
・事業場の名称
・調査終了年月日
・看板表示日
・解体等工事期間
・調査方法の概要
・調査結果
(作業レベル1と2は「調査結果の概要」)
・元請業者
・調査者
・その他必要な事項
そのほか、作業レベル1と2では、上記の項目のほか、以下の項目の記入も必要となります。
・届出先と届出年月日
(届出先の労働基準監督署名と都道府県名を記入)
・特定粉じん排出等作業の作業期間
・特定粉じん排出等作業の方法
・発注者等
作業レベル1と2の作業を行う場合、労働基準監督署長に対して届け出る必要があることから届出先と届出年月日も記入します。そして、アスベストが排出されることから特定粉じん排出等作業の期間と方法も記入しておきます。
また、特定粉じん排出等作業の届出義務者は発注者であることから、発注者の名前も合わせて記入します。
立入禁止の表示
石綿障害予防規則第15条では、立入禁止に関する内容を定めています。
事業者は、石綿等を取り扱い(試験研究のため使用する場合を含む。以下同じ。)、若しくは試験研究のため製造する作業場又は石綿分析用試料等を製造する作業場には、関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に表示しなければならない
(引用:石綿障害予防規則)
つまり、アスベストを取り扱う作業場には関係者以外の立ち入りを禁止すること、そして、その旨を見やすい場所に表示する必要があります。
記載する内容としては「注意 アスベスト除去中 立入禁止」として、立入禁止の文字を赤くしておくことによって、立ち入ってはいけない場所であることが一目で分かるようにしておきます。
作業関係者以外の人がむやみに作業場内に立ち入った場合、健康被害が発生することが考えられるため、一般の人に対しても見やすい表示にしておくことが重要です。
作業主任者の表示
石綿障害予防規則第19条では、石綿作業専任者に関する内容が定められています。
事業者は、令第六条第二十三号に掲げる作業については、石綿作業主任者技能講習を修了した者のうちから、石綿作業主任者を選任しなければならない
(引用:石綿障害予防規則)
石綿作業主任者が行うべき業務としては、労働者がアスベストを吸入することのないように適切な作業指示を出すこと、局所排気装置など労働者が健康被害を受けないようにするための装置を月に1回点検すること、労働者が保護具を適切に使用しているか監視することがあります。
作業主任者の表示板には上記の業務内容を記載した上で、表示板の下部に作業主任者の氏名を記載しておきます。
容器・包装物の表示
石綿障害予防規則第32条1項では、アスベストの運搬、貯蔵時の容器に関することを定め、粉じんが発散したいための対策を、2項では容器に注意事項を表示する内容を定めています。
事業者は、石綿等を運搬し、又は貯蔵するときは、当該石綿等の粉じんが発散するおそれがないように、堅固な容器を使用し、又は確実な包装をしなければならない
2 事業者は、前項の容器又は包装の見やすい箇所に石綿等が入っていること及びその取扱い上の注意事項を表示しなければならない
(引用:石綿障害予防規則)
アスベストが入っている容器や包装の上に注意事項を記載する例としては「注意 石綿廃棄物」と大きく記載するほか、注意事項として「粉じんの発生を極力抑制し、排気による公害を完全に防止すること」と記載しておきます。
容器や包装物の中にアスベストの廃棄物が含まれていることを一目で分かるようにして、むやみに触れることのないようにしておかなければなりません。
喫煙等の禁止に基づく表示
石綿障害予防規則第33条では、アスベストを使用する現場において喫煙と飲食の禁止に関することが定められています。
事業者は、石綿等を取り扱い、若しくは試験研究のため製造する作業場又は石綿分析用試料等を製造する作業場で労働者が喫煙し、又は飲食することを禁止し、かつ、その旨を当該作業場の見やすい箇所に表示しなければならない。
2 労働者は、前項の作業場で喫煙し、又は飲食してはならない
(引用:石綿障害予防規則)
作業場での喫煙や飲食を禁止した内容を看板に記載する例としては「作業所内での喫煙および飲食を禁ず 石綿障害予防規則第33条」となります。
作業場で喫煙や飲食をすることのないように、看板の背景色を赤色にすることで警告の意味合いがより強まります。
アスベストを含む建物を解体する場合に必要な掲示物についてみてきましたが、安全を確保しつつ健康被害の発生を防ぐためには必要な掲示となります。
重要なことは掲示内容を見やすく分かりやすいものとする点です。周辺住民と作業者に健康被害が発生することのないように確実な掲示を行いましょう。
(画像は写真ACより)