石綿作業主任者は作業の責任を取る立場

アスベストの除去作業など、アスベストに関する作業を行う場合には資格を必要としますが、その資格の一つとして「石綿作業主任者」があります。

アスベスト関連の作業について責任を取る立場である石綿作業責任者は、労働者の安全を確保するための専門的な知識や考え方が求められます。

石綿作業主任者とは?

石綿作業主任者とは、アスベストに関する作業を指揮し監督する責任者のことです。アスベストに関する作業を行う場合は石綿作業主任者を選任する必要がありますが、主任者は事業者が資格取得者の中から選びます。

石綿作業主任者の職務としては以下のものがあります。
・作業計画の作成等作業の方法を決定し、その作業を指揮監督する
・呼吸用保護具、保護衣の使用状況を監視する

それぞれの項目について詳しくみていくことにします。なお、作業を指揮監督するという言葉には、当然、現場にいるというニュアンスを含んでいますので、通常は、各現場に一人石綿作業主任者が必要ということになります。

作業計画には、下記の6点を盛り込む必要があります。

  1. 安全衛生管理体制
  2. 作業方法、順序
  3. 粉じん発散防止、抑制措置
  4. 労働者の粉じんぱく露防止措置
  5. 隔離、立ち入り禁止措置
  6. その他(作業環境測定、廃棄物の処理方法等)

作業を決めるための指針となるのが、厚生労働省が公表している「石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアル」です。マニュアルには、事前調査の実施やアスベスト除去作業において必要な措置や注意点などが詳しく記載されています。その内容を参考にしながら作業を決めることによってアスベストの粉じんに汚染される可能性が低くなり、労働者を守ることにつながります。

そのほか、後述する「石綿作業主任者の講習」を受講することによっても、アスベスト作業における健康被害を防ぐ対策を講じられるようになります。

次に、保護具の使用方法の監視も石綿作業主任者の重要な役割です。

まず、呼吸用保護具で法律により、送気マスク、電動ファン付き呼吸用具、防じんマスクを装着する必要があります。一般的に販売されている使い捨てマスクや、防毒マスク(防じん機能のないものがほとんど)は使用できません。では、どのように使用状況を監視するかというと、電動ファン付き呼吸用具と防じんマスクには、厚生労働省告示による規格があり、型式検定合格標章が付いていますので、その有無を確認します。また、フィルタは毎日交換するか、交換した日でも、使用中に息苦しくなったら、新しいフィルタに交換できるよう、気配りと準備が必要です。

保護衣についても、JIST8115「化学防護服」に規定されている、タイプ5の「浮遊個体粉じん防護用密閉服」同等品以上の物を使用することが決まっていますので、通常の作業服等は使用できません。

主任者としての正しい知識を持ち、保護具の使用方法に不備がある場合は確実に指摘する必要があります。

石綿作業主任者の資格を取得する方法は?

石綿作業主任者の資格を取得するためには、2日間にわたる学科講習を受け、2日目の最後に行われる修了試験に合格する必要があります。

石綿作業主任者の受講資格は特に設けられていません。ただし、18歳未満の人は労働基準法の年少者労働基準規則によってアスベスト関連の作業が認められていないことから石綿作業主任者の講習を受けることができません。

そのため、石綿作業主任者の受講資格は実質18歳以上の人に限られる形となります。

石綿作業主任者の講習内容は以下の通りとなります。

・健康障害及びその予防措置に関する知識(2時間)
・保護具に関する知識(2時間)
・作業環境の改善方法に関する知識(4時間)
・関係法令(2時間)
(引用:東京労働基準協会連合会)

講習が終了した後に修了試験が行われます。

アスベストを取り扱う場合に必要な知識や法令を学ぶことによって、アスベスト関連の作業において行うべき内容や守るべきことが明確になり、主任者として必要とする知識を得ることができます。

アスベストに関連する作業で健康被害を防ぐためには労働者一人一人の心がけが大切ですが、労働者の意識を高めるのは主任者の役割です。石綿作業主任者が現場を一つにまとめて作業を円滑に進めていきましょう。

(画像は写真ACより)

引用:中央労働災害防止協会編 石綿作業主任者テキスト 58-59、146

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