アスベストによって土が汚染される可能性も

アスベストは目に見えないほど小さな物質であり、飛散しやすい性質を持っていることから、大気中のアスベストに関しては法律によって規制値が設けられています。

それでは、アスベストは土壌にも影響を与えるのでしょうか。土壌にアスベストが含まれることの問題点についてみていくことにしましょう。

アスベストが土壌に含まれている場合の問題

大気中のアスベストの飛散に関しては、大気汚染防止法によって規制されます。

一般的な大気の環境基準値は設定されていませんが、アスベストを取り扱う工場や作業場の敷地境界線においては、大気中のアスベスト濃度は大気汚染防止法によって大気1リットルあたりアスベスト10本までと規定されています。

しかしながら、土壌に含まれているアスベストに関しては土壌汚染対策法の規制対象とはなっていません。そのため、土壌にアスベストが含まれていたとしても法律上は問題がないことになります。

ただし、土壌に含まれているアスベストは土を掘り起こすことによって空気中に飛散してしまう可能性があり、健康被害の原因になることもあり得ます。

そのため、アスベストが含まれている土地の取引を行うと、トラブルに発展する可能性があり、過去には訴訟問題に発生したケースもあります。次の項目ではその問題について紹介していきます。

アスベストの土壌汚染が原因で訴訟になることも

物流企業が新しい物流ターミナルを建設するため、その土地を保有している企業から土地を購入する売買契約を締結しました。

売主の企業はその土地に建っていた建物を解体し、買主の企業に土地を明け渡しましたが、その土地にはアスベストを含むスレート片が広範囲にわたって多数混入していることが判明しました。

買主の企業は健康被害の拡大を防ぐため、アスベストを含むスレート片を全て除去し、売主の企業に対して撤去費用の負担を求めましたが、売主の企業は費用の負担に応じませんでした。そのため、買主の企業は損害賠償請求の訴訟を行います。

買主・売主双方が地方裁判所の判決を不服としたため、裁判は高等裁判所で行われましたが、それでも両社が納得しなかったため、最高裁判所の判断にゆだねる形となりました。

最高裁判所は売主の企業の上告を棄却、両社の上告受理申し立てを受理しないとの決定を下し、最終的には高等裁判所の判決である約59億5000万円の遅延損害金支払いが確定することとなったのです。

土地にアスベストが含まれている場合、周辺地域における健康被害の発生を防ぐためにアスベストの除去作業を行う必要がありますが、その処理費用は高額なものとなります。

土壌汚染対策法ではアスベストに関する規制が設けられていないものの、健康被害が発生する可能性を踏まえれば、アスベストの処理は必須といえるでしょう。

土壌にアスベストが含まれていても責任が問われない可能性も

先の項目では、土壌にアスベストが含まれている土地を購入する場合、売主の責任になる事例について説明しました。

しかしながら、土壌にアスベストが含まれていたとしてもそれを規制する法律がないために、アスベストが含まれている土地を売主が売却したとしても、売主の責任にならないケースもあるのです。

裁判の例として、売主が売却した土地に有害物質であるトルエンやキシレンが含まれていたにも関わらず、法律で規制されていなかったために売主が責任を負わなかったことがあります。

上記の例はアスベストではありませんが、トルエンやキシレンはアスベストと同様に有害な物質です。それを踏まえれば、法律で規制されていないため、土壌にアスベストが含まれていても責任が問われない可能性もあるのです。

まとめ

土壌にアスベストが含まれていても、土壌汚染対策法の対象とはなりません。しかしながら、土の中にアスベストが含まれている場合、土を掘り返すことによってアスベストが飛散する可能性も十分に考えられます。

また、アスベストの廃棄方法に関しては廃棄物処理法によって定められており、自己的な判断によって土中に廃棄することは認められていません。アスベストを原因とする健康被害を発生させないためにも、飛散しないための対策が求められます。

(画像は写真ACより)

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