健康被害を防ぐためにも記録は確実に

アスベスト関連の解体工事では、アスベストが飛散する可能性があることから作業記録を記入して保存しておく必要があります。

具体的にはどのような内容を記入して、どの程度の期間保存しておけば良いのでしょうか。確実な記入と保存を行うためにも、作業記録に関することを正しく理解しておきましょう。

作業記録に記載する内容は?

アスベストを含む建材を解体する場合、石綿障害予防規則第35条に基づき作業記録を作成する必要があります。記録する内容は以下の通りです。

・労働者の氏名
・作業の内容と作業に従事した期間
・アスベストによる汚染が生じた場合、その内容と応急措置の方法について

記録するタイミングは、同規則の同条において「一月を超えない期間ごと」と定められているため、最低でも1か月に1回の間隔で記録する必要があります。

また、その記録の保管期限は40年間と定められていますが、保存を始めるタイミングは労働者が作業に従事しなくなった時点からとなります。

労働者氏名、作業内容、従事期間を記録する理由は?

アスベストに関する業務にたずさわる場合に労働者の氏名、作業の内容、作業に従事する期間を記録する理由は、将来的に生じる可能性があるアスベスト関連の健康被害対策です。

アスベストが原因で生じる健康被害としては、肺がん、中皮腫など肺に関連する疾病があげられます。

政府は、一定の業務に従事することによってなんらかの健康被害が生じる可能性がある人を対象に「健康管理手帳」を発行していますが、健康管理手帳はアスベストの粉じんが飛散する場所で作業を行う人に対しても発行されます。

アスベスト関連の解体工事にたずさわっている場合、健康管理手帳が発行される条件は以下の通りとなります。
・アスベストが使用されている保温材、耐火被覆材等の張り付け、補修、除去の作業に1年以上従事していた人
・アスベストが吹き付けられた建築物や工作物などの解体作業に1年以上従事していた人
・上記以外のアスベストを取り扱う作業に10年以上従事していた人

健康管理手帳を発行するための基準は、「どんな作業に従事していたか」ということと「どんな作業を何年間行っていたか」ということになりますが、これらはアスベストの作業に関する作業記録で確認できます。

また、作業記録は40年間の保存が義務づけられていますが、その理由は、アスベストを原因とする疾病は発症までの期間が長いためです。

発症期間は疾病の種類によって異なりますが、10年程度で発症するケースもあれば、30年以上を経過してから発症する場合もあります。そのため、作業記録の保存期間は40年間と定められています。

アスベスト汚染が生じた場合と応急処置の方法について

アスベストに関する作業を行っている際にアスベストの粉じんが飛散するなどしてアスベスト汚染が生じた場合には、その概要を記録するほか、応急処置の方法についても記載しなければなりません。

アスベストの粉じんが飛散する原因としては、飛散防止対策が不十分であることや、解体作業中に突然建材に亀裂が入ってそこからアスベストが飛散してしまったことなどが考えられます。

また、応急措置の一例としては、ビニールシートを利用した養生のほか、散水でアスベストを湿潤化させて飛散を防ぐ方法があります。ただし、養生や湿潤化などで飛散を防ぐことができない場合にはロープを張って立入禁止とすることで対応します。

アスベスト関連の疾病は、症状が重くなるだけでなく潜伏期間が長い特徴があることから、40年という長期間にわたって保存しておかなければなりません。

作業者を健康被害から守るためにも、作業記録は確実に記入し、保管しておくことが重要となります。

(画像は写真ACより)

 

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事