改正大気汚染防止法が6月に公布 施行は1年以内の予定

2020年5月、大気汚染防止法の一部を改正する法律案が成立し、6月に改正法が公布されました。改正法は一部の規定を除いて、公布した日から1年以内に施行される予定です。

改正法ではどのような点が変更となったのでしょうか。現行法と比較しながら、変更となった内容について把握しておきましょう。

全てのアスベスト含有建材が規制対象に

大気汚染防止法の改正により、全てのアスベスト含有建材が規制対象となりました。

同法の改正前までは、大気汚染防止法施行令において定められた「特定建築材料」、すなわちレベル1と2に当てはまるアスベストの建材のみが規制の基準であり、レベル3の建材については規制の対象外となっていました。

レベル3の建材としてはアスベスト成形板があります。アスベスト成形板はアスベストが含まれるものの、建材の内部でアスベストがセメントなどで固定されている状態であるため、通常の使用ではアスベストが飛散する可能性は低くなっています。

しかし、建物の解体作業中や不適切な処分によって、アスベスト成形板の内部からアスベストが飛散する事例が問題となっていました。

レベル3の建材からアスベストが飛散することを防ぐため、全てのアスベスト建材が規制の対象となります。

事前調査結果報告が義務化

また、法令の改正によって、アスベストを含む可能性がある建物を解体する場合に行う事前調査については、建物の規模が一定以上である場合、アスベストを含んでいる建材が使用されているかどうかにかかわらず、事前調査の結果を都道府県に報告することが義務づけられました。

法令の改正前は、事前調査の結果は発注者に説明するだけで済んでいましたが、事前調査の方法が不適切である場合、アスベストを含む建材を見落としてしまうことがあり、結果として、アスベストの飛散につながるケースがありました。

そのような事態になると、都道府県がアスベストの飛散状況を把握することができなくなります。それを防ぐため、都道府県に対する事前調査結果報告は義務となります。

直接罰の創設

そのほか、法令の改正によって「直接罰」が創設されました。直接罰の対象となるのは、隔離の作業を行わずに吹き付けアスベストの除去作業を行う場合などです。

直接罰とは、違法行為が見られた場合、即座に罰することを指します。

直接罰の制度を用いない場合、行政指導や行政命令を行って、自主的な改善を図ります。しかし、隔離の作業を行わずに吹き付けアスベストの除去作業を行ってしまうと、アスベストの飛散量が多くなり、アスベストの健康被害が発生する可能性が高まってしまいます。

そのような状況になることを防ぐために、直接罰の制度を用いて厳しく取り締まる方法に変更されることとなりました。

作業結果を発注者に報告することが義務化

法改正によって、作業結果を発注者に報告することと、作業記録の作成と保存が義務化されました。

これらが義務化された背景としては、アスベストの除去作業が不適切であるために、アスベストを含む建材が作業現場に取り残されたままになることがあげられます。

不適切な作業が生じてしまうことを防ぐためには、作業記録を作成し、作業結果を発注者に報告することが効果的となります。

作業記録を作成するためには、作業中の現場の状況を確認する必要があるため、不適切な作業が行われていた場合には、作業現場の確認中に指摘することができます。

それによって、不適切な作業の発生を防ぐことができ、アスベストを含む建材を適切に取り除くことが可能となるのです。

その他

その他、法改正によって追加される項目としては以下のものがあります。
・都道府県等による立ち入り検査の対象が拡大されること
・国や都道府県等は、建築物の所有者に対してアスベストの使用状況を把握するようにうながす努力をすること

改正大気汚染防止法の施行後は、新たに変更された項目に基づいて作業を行う形となります。改正法の施行までに新たな作業方法に対応して、アスベストによる健康被害の発生を防ぎましょう。

(画像は写真ACより)

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