悪性中皮腫が生じるとせきや呼吸困難を伴う
アスベストを原因とした症状の一つに「悪性中皮腫」があります。
悪性中皮腫は、アスベストを吸い込むことによって肺のまわりにある細胞が変化して生じたものですが、それが原因でせきが出たり呼吸困難になったりします。
また、アスベストばく露してから症状が出るまでの期間は20~50年と長いことが特徴であり、早期発見が難しい病気といえます。
悪性中皮腫とは?
悪性中皮腫とは、肺のまわりにある「中皮細胞」が変化して生じた腫瘍のうち、悪性となったものを指します。
肺のまわりは薄い膜である「胸膜」に包まれており、胸膜の表面には中皮細胞があります。中皮細胞が腫瘍になったものには良性と悪性の両方があり、一般的に「中皮腫」とは悪性になったものを指します。
上記で中皮腫は悪性であることを説明しましたが、中皮腫が悪性であることを明確にするために「悪性中皮腫」と呼ぶ場合もあります。
悪性中皮腫の原因は?
悪性中皮腫は、肺のまわりを薄い膜で包んでいる「胸膜」と、お腹まわりの臓器を薄い膜で包む「腹膜」に生じることがあるほか、ごくまれに心臓を包む「心膜」にも生じることがあります。
なお、中皮腫は多くの場合、胸膜に生じます。その理由は、中皮腫が発生する原因のほとんどがアスベストであるためです。
アスベストが肺の中に入り込むことで、肺の中の細胞に蓄積されていきます。通常、肺の中に異物が入り込んだ場合、たんと一緒に身体の外に排出されますが、吸い込んだアスベストの量が多くなると排出しきれなくなり、肺の中に残ってしまいます。
アスベストは目に見えないほど小さな繊維でできていますが、鉱物であるために肺の中で分解されることはありません。
そのため、アスベストは肺の中に長期間蓄積することになり、肺の細胞を損傷する原因となります。
なお、アスベストばく露をしてから悪性中皮腫を発症するまでの時間は20年~50年程度と長いことが特徴です。アスベストばく露してからさほど時間が経過していない段階では症状はみられないため、早期の段階で発見することが難しい病気といえます。
しかし、長い時間が経過した後に徐々に症状が現れることがあるため、アスベストに関する業務にたずさわった経験がある場合は、毎年健康診断でレントゲン撮影を行うことで、悪性中皮腫を発見できることがあります。
悪性中皮腫の症状は?
悪性中皮腫の症状は、胸に痛みが生じてせきが出ること、胸に圧迫感が生じて呼吸困難になることがあげられます。
そのような症状が生じる原因は、胸膜に腫瘍ができることで呼吸の機能が低下してしまうことや、胸水がたまってしまうためです。
胸膜に腫瘍ができてしまう要因は、先の項目でも説明したとおり、肺の細胞内にアスベストが長期間にわたって残ってしまうことによるものです。
胸水とは、肺の炎症や腫瘍などが原因で胸膜に含まれる液体が増えてたまってしまった状態を指します。
肺の外側には2種類の胸膜があります。肺の最も外側にある胸膜を「壁側胸膜」と呼び、肺の臓器側を包む胸膜を「臓側胸膜」と呼んでいます。
壁側胸膜と臓側胸膜の間には薄い空間があり、通常はその空間に胸水がわずかに含まれていますが、肺の中に炎症や腫瘍が生じることによって水がたまってしまうのです。
悪性中皮腫が生じる可能性が高い人は、アスベストに関する業務にたずさわっていた人ですが、かつてアスベストを取り扱っていた作業所の近くに住んでいた人もアスベストに関する症状が発生する場合があります。
アスベストに関する業務にたずさわっていて、息苦しいと感じることがあれば、早めに専門の医師の診断を受けるようにしましょう。
(画像は写真ACより)