アスベストによる健康被害を防ぐために早急な対策を
賃貸物件を所有していると定期的に家賃収入を得られる点がメリットですが、その一方で、なんらかの問題が発生することがあります。特に対処が難しい問題としてあげられるのは「アスベスト」によるものです。
アスベストは健康被害を及ぼす可能性があるため、早急な対策が求められますが、具体的にはどのような対策を講じれば良いのでしょうか。
アスベストの具体的対策とは?
アスベストを含む建材を確認
アスベストを含む建材を確認する所有している賃貸物件でアスベストの使用が発覚した場合、アスベストの飛散防止対策を行わなければなりませんが、そのためにはどの建材にアスベストがどの程度含まれているかを確認する必要があります。
それをあらかじめ調べておくことによってアスベストの飛散防止対策をスムーズに行えます。
そのほか、アスベストを含む建材を確認しておくべき理由として、民法第717条に記載されている「土地の工作物に対する責任」を果たすことがあげられます。
アスベストを含む建材が使用されている物件の場合、アスベストの健康被害が発生する可能性が考えられますが、アスベストを含む建材を事前に確認しておくことによって、万が一健康被害が発生した場合に損害賠償の対応を迅速に行うことが可能となります。
アスベストの飛散防止対策
アスベストの飛散防止対策を行う
物件にアスベストの使用が確認されたら、物件の利用者の健康被害を防ぐためにもアスベストの飛散防止対策を行います。
物件に吹き付けられたアスベストが使用されている場合、飛散を防ぐ方法としては、アスベストの除去作業や、アスベストがこれ以上に広がらないようにするための囲い込み作業などがあります。
ただし、物件の利用者がいる状況でアスベストの除去工事を行う場合、アスベストにさらされる「ばく露」の状態となりやすく、健康被害を受ける可能性が十分に考えられます。そのため、アスベストの除去工事を行う場合は専門家に相談したうえで実施することが基本です。
また、アスベストを含む建材はレベル1~3に分けられています。レベル1はアスベストが吹き付けられた建材であるため飛散する可能性が高いですが、レベル3の建材は板材にアスベストが含まれている状態であるため、アスベストは飛散しにくくなっています。
しかし、レベル3の建材が破損している場合、そこからアスベストが飛散する可能性があるため、補修を行わなければなりません。
アスベスト定期調査及び状況を報告
定期調査を実施してアスベストの状況を報告
また、所有する物件の規模が大きい場合、建築基準法に基づき建築物の定期調査を実施する必要があります。
定期調査においては吹き付けアスベストの使用状況や建材の劣化状況、除去や飛散防止の実施状況など、建物のアスベストに関する状況を調査します。
定期調査を実施する建物の規模については都道府県によって異なりますが、原則として不特定多数の人が利用する施設においては定期調査が義務づけられています。
報告先は特定行政庁ですが、特定行政庁とは建築主事の設置が義務づけられている自治体の長のことで、都道府県知事もしくは比較的規模の大きな市長などがその業務を担当します。
資産除去債務の評価
資産除去債務の評価を実施するそのほか、正しい不動産評価のために、企業会計基準に基づき「資産除去債務の評価」を行います。
アスベストを含む物件は将来的に原状回復を行わなければならないため、アスベストを含む建材を処分する費用がかかることになりますが、その費用をあらかじめ負債として評価しておきます。
資産除去債務の評価を正しく行うためには、アスベスト調査を実施する必要があります。
物件にアスベストが使用されている場合の対応方法についてみてきましたが、アスベストの使用が発覚したら物件の利用者の立場を第一に考え、被害の拡大を防ぐためにも迅速な対応が必要です。